平成26(2014)年度の成果

平成26年度は木製品が14遺跡453点で、金属製品を中心とするその他の材質は9遺跡234点の保存処理をおこないました。以下、主要なものについて紹介します。

木製品

今宿五郎江遺跡9・11・13・15次調査

今宿五郎江遺跡は西区今宿町に所在する遺跡で、2002年からの伊都区画整理事業に伴い広範囲に調査され、弥生時代の後期には溝がめぐる大規模な環濠集落であったことがわかりました。遺跡からは朝鮮半島北部にあった楽浪郡の土器や南部の瓦質土器、瀬戸内・近畿・東海地域の土器などが出土し、海を介して他地域と活発に交流していたことが伺えます。銅戈の鋳型が出土しており、青銅器生産が行われていたようですし、西に隣接する大塚遺跡では製鉄を行っていた痕跡も見つかっており、当時の最新技術を持った集落だったようです。一方、農耕具の鍬や鋤、漁労具の石錘・簎などが多量に出土していることから、農業や漁業も盛んだった様子がうかがえます。木器は主に弥生時代後期の環濠の中から出土しています。
1は平鍬です。今宿五郎江遺跡では身の後面に段を持つものが多くみられますがその機能は明かでありません。長34.0センチ。
2は狭鍬です。狭鍬には段がありません。長30.0センチ。
3は曲柄平鍬です。先端が曲がった柄に結んで使用します。ほぞ孔がある直柄鍬より極端に数が少ないです。長42.0センチ。
4は三又鍬です。長42.3センチ。又鍬はほかに二又のものもあります。
5・6は一木鋤です。5は身が長く、6は身が短い。5は残存長75.2センチ、6は長77.0センチ。
7はえぶり。土を均等にならす道具です。幅31.7センチ。
8は鉄斧柄です。長63.0センチ。
9は火鑽臼です。火を起こした孔が12ヶ所あります。長58.5センチ。
10は横槌です。長38.6cmから43.0センチ。
11は椅子と考えられます。脚部に方形の透かし孔を2つ穿っています。高20.2センチ。
このほかヤス、容器、ヘラ状木製品、木鏃、組み合わせ式机(案)の部材などが出土しています。
今宿五郎江遺跡の木製品はまだ未処理のものが多数あり、今後数年かけて保存処理を進める予定です。

今宿五郎江遺跡出土木製品
平鍬
1
狭鍬
2
曲柄平鍬
3
三又鍬
4
一木鋤
5
一木鋤
6
えぶり
7
鉄斧柄
8
火鑽臼
9
横槌
10
椅子
11

金属製品

金武古墳群第8次調査

金武古墳群(西区大字吉武)は日向川によって形成された扇状地と周辺の山麓に位置し、173基の古墳が確認されています。今回は20基の古墳を調査しました。古墳はすべて開口しており,盗掘や石材の抜き取りによって荒らされていました。辻金具、帯金具、鉸具、鐙吊金具などの馬具、大刀の青銅製三累環頭柄頭、鋤先、鉄鎌、鉄鏃、弓金具、刀子などが出土しています。

三累環頭柄頭
三累環頭柄頭
鉄鎌
鉄鎌

遺物の再処理

1990年代以前に発掘調査され、保存処理をしないまま収蔵された遺物や、保存処理後に劣化が進み、再処理が必要となった遺物についても処理をおこなっています。
博多172次調査出土の折り曲げられた刀は、一度保存処理をしたものの再びさびが出てきました。再度セスキ炭酸ナトリウムによる脱塩処理と樹脂含浸をおこないました。

さびが再発した刀
さびが再発した刀
脱塩処理
脱塩処理

その他

古人骨の出土状況の調査,実測,取上げ,性別・年齢の鑑定も行っています。

甕棺墓
甕棺墓
人骨実測図
人骨実測図