≪新指定文化財≫令和5年度の福岡市指定有形文化財について 【2024年03月21日】
【2024年03月21日】
令和6年2月7日(水)に開催された福岡市文化財保護審議会(会長 佐伯弘次)において、次の3件を福岡市有形文化財に指定することが妥当である旨、答申がなされました。
令和6年3月21日付け福岡市公報で告示され、正式な指定となりましたので、お知らせいたします。
・福岡市指定有形文化財(絵画)
名 称:絹本著色仏涅槃図(けんぽんちゃくしょく ぶつねはんず)
員 数:1幅(いっぷく)
所 有 者:宗教法人 称名寺(しょうみょうじ)
指定理由:
本作は画一化されない人物表現がなされ、要所に色隈(いろぐま)や金泥による多彩な文様表現など、伝統的な仏画制作に習熟した画技を認めることができ、上質な絵絹が用いられていることも考え合わせると、その制作は14~15世紀に遡ると判断できます。市内では数少ない中世仏画の佳品です。
箱書きなどに伝来の経緯が記されている点も貴重であり、遅くとも文明13年(1481)には長崎南部に伝来し、その後、願行寺(熊本県玉名市)に伝わりました。
・福岡市指定有形文化財(絵画)
名 称:絹本著色仏涅槃図(けんぽんちゃくしょく ぶつねはんず)
員 数:1幅(いっぷく)
所 有 者:宗教法人 東長寺(とうちょうじ)
指定理由:
本作は、南都工房で制作された鎌倉期の涅槃図の図様を忠実に継承しており、裏彩色(うらざいしき)や盛り上げ彩色を多用した丁寧な賦彩(ふさい)がなされるなど高い技巧が認められる点から、制作時期は14世紀後半~15世紀前半と考えられます。正統な図様と高い出来栄えを備えた中世仏画の佳品です。
また、本作と図様を同じくする画稿が黒田家の御抱え絵師であった尾形家の絵画資料や福岡県内の寺院等に伝来しており、近世筑前の仏画制作において強い規範性を有したことが推定できる点も貴重です。
・福岡市指定有形文化財(彫刻)
名 称:木造二天王立像(もくぞうにてんのうりゅうぞう)
員 数:2躯(にく)
所 有 者:宗教法人 東長寺
指定理由:
持国天立像は、表情や体躯(たいく)表現、姿勢などから平安時代後期12世紀の制作と考えられます。
鎧の文様を彩色(さいしき)でなく彫刻であらわすのが特徴で、これは、九州以外の地域ではあまり類例がないため、当地で独自の流行をみせた表現と考えられています。
多聞天立像は、像内墨書から持国天よりも時代が降る慶長3年(1598)の造像と考えられます。
兜を別材製とし、鎧の文様を彫出するなど持国天の造形を継承する意識が強く、一具で祀るために制作されたことは疑いありません。
九州独自の神将形像の表現が長きにわたって伝わったことがうかがえる点が貴重です。