石造地蔵菩薩坐像
紹介文
地蔵菩薩は、釈迦入滅の後、弥勒仏が出現するまでの間、五濁(ごじょく)の世に出現し、六道の衆生を救済する菩薩とされており、外部の災難から人間を守るという観音菩薩に対して、地蔵菩薩は現実の生活の中で飢えず、病にかからず、心の邪悪な者を改心させて涅槃に安住させるという、より人々に身近な菩薩として、平安時代より民衆の信仰が盛んであった。地蔵菩薩は、平安初期より造仏の遺作が残るが、石造の地蔵菩薩の造立がはじまるのは平安時代の末期からとされ、鎌倉時代から室町時代にかけての造仏は全国的に多い。
本像はその中でも多く見られる形で、僧の姿で右手に錫杖を持ち、左手は宝珠(欲しいと思うものを何でも出すという玉)を持ったと思われる印相(手の形や持物)を表している。僧の形に描くのは、僧が民衆を導くのに最も親しまれ、信頼されている対象であり、錫杖をもっているのは、現世を隈なく行脚して、大衆の苦しみを見出して救済の手をさしのべることを象徴しているためと言われる。
残念ながら本像はむかって右半面の顔の表面が欠損しており、完全な表情はうかがえないが、面長で下膨れの輪郭、低く太い鼻、小さくひきしまった口、大きく孤を描いた眉に細い目など優しく包擁力のある慈顔である。体は、どっしりと組んだ膝に、なで肩の上半身が支えられ、浅い彫りの衣と共に華著な印象を与える。本像は台座から光背まで一材から彫り出されており、像本体はほぼ丸彫りに近い浮彫りである。本像は貝原益軒の『筑前囲続風土記』に記されるように、平重盛が育王山に金を送った際に持たらされたという伝えがあり、この地域の外交的位置を思わせるものがある。
(1)五濁‥‥‥世の中の五つの汚れ、刧濁、見濁、命濁、煩悩濁、衆生濁の五種。
(2〉六道・・・・・ すべての衆生が生前の業因によって生死を繰り返す六つの迷いの 世界。地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天上の六つをいう。
(3)育王山・・・ 中国斬江省にある山。古代の有名な巡礼地で日本からも巡礼する 者が多かった。
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