能古島白鬚神社おくんち行事
紹介文
白鬚神社は能古島字東にあり、島内五ヵ所の集落のうち、大泊を除く江ノロ・東・西・北浦の四集落(字)が祭祀に携わっている。例祭は10月9日と11月28日、前者を〝おくんち〟、後者を〝おまつり〟と呼び、おくんちには宮座がある。ここの宮座の特色は、四つの字それぞれにトウ(座元)を決めて神迎えをし、神饌を調整して、宮座当日幼児の御幣持ちを先頭に神社まで神饌を運び、合同して祭典を執行するところにある。
日程は10月1日に注連ない、4日に注連卸し、8日にキリモリ、9日が宮座となっている。
注連ないは各字の世話人が集まって神社とトウ元に張る注連をない、神社境内の注連はその日のうちに取付ける。
注連卸しは字ごとに行ない、トウ元に門注連を立て、神社から御幣を受けて床の間に飾り、字の人びとが参りに来て直会がある。
神饌の調整をキリモリと呼び、各字で御供・モリモン・懸鯛・オロへイ(一夜作りの甘酒)等を整える。神饌の中心は御供とモリモンで、御供は粳の熟飯を手でこねて、藁苞に包み“オキョウ”と呼ぶ。御供の調製には両親持ちの青年があたる。本社に供える三本のほか、末社の分は各字で分担する。本社の分は苞を24本のムスデで結い、ムスデの先端を残して鬚に見立てる。末社の分は苞の上部を一本のムスデで結ぶ。モリモンは大根葉(近年はミズイモの茎やイモヅル)を筒状に束ね葛で三ヵ所を結えた台に、柿・栗・密柑を竹串に刺して取り付け、木の桶に入れナマノクサケ(小鯛)を添える。竹串を400本あまり用意し、本社の分は柿・栗・蜜柑をそれぞれ1台ずつ、木桶の上部に隙間なく山形に盛り付け、栗のモリモンには御幣を立てる。末社の分は、同じく大根葉の台に柿・栗・密柑の竹串を疎らに刺し、底に竹串三本の脚を立てて木桶に入れる。神饌の調製が終わると床の間の御幣の前に並べ、トウ元が準備に携わった字の人びとを饗応する。
宮座当日は午前8時ごろ、トウ元で子供の御幣持ちを神饌の前に坐らせてミタテをし、字の人びとが行列を組んで、御幣持ちと神饌を神社まで送る。宮座は午前10時から。修祓・開扉につづいて献饌。伝供作法により字単位に調製した神饌が供進され、同時に境内末社にも分担に随って各字の人びとが献饌をする。祝詞奏上のあと、御幣の返還があり、神職が御饌米のオヒネリを御幣持ちに渡し、氏子の玉串奉奠、撤饌、閉扉で祭典を終わり、直会となる。
この宮座の圧巻は四ヵ所の字から供進される神饌の豪華さにあり、そのほかにも随所に古格をとどめて、いかにも”おくんち”の行事にふさわしい趣きを漂わせている。
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