福岡城出土輪宝・壺

紹介文
国史跡福岡城跡内にあった、旧舞鶴中学校敷地から昭和36(1961)年度の校舎整備に伴う工事中に出土した。
出土地点は、大濠に面した三の丸西郭に位置し、元禄12(1699)年に描かれたとされる『御城内絵図』上では、藩主の居館である下屋敷のほぼ中央に相当する位置と推定される。福岡城三の丸下屋敷、または屋敷地全体の地鎮具として使用されたと考えられる。
輪宝と壺は並んで立った状態で埋まっており、そのすぐ上には径10㎝程度のカワラケが数枚あったとされる。また、壺の中には砂および水晶が入っていたとされているが、現物は確認されていない。
蛍光X線分析によると、輪宝と壺はほぼ同質の青銅製であり、作風からも同時に鋳造された可能性が高い。
密教においては、平安時代以降、寺院造営前に、鎮物や輪・橛を埋めて土地や土壇を鎮める地鎮・鎮壇修法が行われており、中世から近世にかけては、城館の築城にあたっても行われてきた。
本資料とほぼ同時期と考えられる密教系地鎮関係資料は、東京都江戸城本丸跡、和歌山県和歌山城本丸跡等から出土しており、当時の地鎮支度と修法の一端を知るうえで貴重な資料である。
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