3 弥生のタイムカプセル「甕棺」
2,000年前を知るヒント
甕棺は、亡くなった人を埋葬するための土器の棺です。しかし、見方を変えれば、弥生人に関するさまざまな情報を詰め込んで、地中に密封・保存した「タイムカプセル」と呼ぶこともできるでしょう。甕棺墓は、過去に関するさまざまな知識を、われわれ現代人に与えてくれます。例えば、葬られた人の骨が残っていれば、性別や、死亡年齢、病気・けがの痕、顔かたちの特徴、親族関係などを知ることもできます。
甕棺とは
先に述べたように、甕棺とは土器を棺として使用したものを指す言葉です。甕や壺などの容器を、遺体を納める棺として用いる事例は、世界各地でみることができ、日本でも、古くは縄文時代から新しくは江戸時代に至るまで、この風習が存在したことが確認されています。しかし、ここでいう「甕棺」とは、弥生時代の前期後半以降、九州北部地域において成人を葬るために用いられた専用の棺を指しています。縄文時代終わりごろの大型壺が変化し、埋葬専用の「甕棺」が生み出されたことは明らかになっていますが、なぜ九州の弥生人が大型の土器を棺として選んだのか、まだよく分かっていません。